こんにちは、音楽ライターのTAKAHAです
8月29日に放送されたラジオ番組『星野源のオールナイトニッポン』で星野源さんと音楽ジャーナリストの高橋芳朗さんが自身の新曲『Family Song』について徹底解説してくれました。
今回はその放送の中から今回は表題曲『Family Song』について語った部分を抜粋して紹介します。時間が無くて2時間の放送を聴けないという人や要点だけを抑えたい!と言う人はぜひ参考にしてみてください。
星野源×高橋芳朗「Family Song」徹底解説
星野(以下:星野)「はい お送りしたのは星野最新シングル『Family Song』でした 」
高橋(以下:高橋)「素晴らしいですね まだ、あれですよね ライブでは演奏していないですよね」
(星野)そうです ライブでは
(高橋)「スタジオライブっていう形では?
(星野)例えば音楽番組は僕、どんどんやろうと思っていて それはあるんですけど
(高橋)どうですか? 実際に演奏してみて改めて気づくことってあるものなんですか?
(星野)でも、客前ではやっていないんですよね いわゆる収録番組ってお客さんがいないことが多いんで 『ミュージックステーション』だけでしたね 今回 しかも、セットの都合上というか、お客さんが前にいない状態のセットだったんです 僕の時は いろんなパターンがあるんですけど、お客さんが前にいる時もあるし、いない時もあって なんで、あんまり「ライブでやっている」っていうよりは「カメラに向かって、テレビの前の人に向かってやっている」っていうイメージだったんですけど
(高橋)でも、ライブでやることによってまたちょっと違う表情を持てる曲なのかなっていう気はしますね
(星野)変わってくるだろうなっていう感じもしますね なので、今度のさいたま(スーパーアリーナ公演)ではやるので それが楽しみですね どんな感じになるのか?っていうのが
(高橋)期待しております
(星野)ありがとうございます 今日は『Family Song』の話をしながら、いろいろと曲を聞いたりしていこうっていう
(高橋)やっていきましょうか じゃあちょっと、いいですか 最初に『Family Song』と一緒に聞きたい曲として紹介したいのが、アル・グリーンの『Let’s Stay Together』っていう1971年の曲なんですけども
(星野)最高ですね
(高橋)良いですよね 『Family Song』を気に入った人におすすめしたいソウル・ミュージックとしては、結構僕はこれが真っ先に思い浮かんだというか
(星野)ああ、そうですか へー
(高橋)で、星野さんもモチーフのひとつとして、アル・グリーンとかマーヴィン・ゲイとかは名前が出ていましたよね
(星野)そうですね
(高橋)結構、ほっこりあったかいソウル・ミュージックというか、そういう感じだと思うんですけど で、アル・グリーンって主に1970年代に活躍したソウルシンガーで、例えばマーヴィン・ゲイっていう人とかバリー・ホワイトっていう人みたいに結構ロマンティックなソウル・ミュージックの代名詞な人ですかね
(星野)『Let’s Stay Together』も本当に甘いラブソング
(高橋)結構向こうでは「Baby Making Music」って言われるんですよ
(星野)あ、「子作り」!
(高橋)子作り音楽
(星野)良いですねえ
(高橋)そうなんですよ 前にバリー・ホワイトのインタビューを読んだんですけど、バリー・ホワイトとかは街とかを歩いていると、ファンから「おい、バリー! お前のせいでまた子供できちまったよ!」って言われるらしいんですよ(笑い)
(星野)(笑い) 良いですねー!
(高橋)良い話ですよね!
(星野)良い話! 本当に甘いっていうか
(高橋)そう ただ、そんな中でもアル・グリーンは割と童貞フレンドリーというか マーヴィン・ゲイとかバリー・ホワイトはもう、「ビショビショじゃねえか!」みたいな、そういう感じなんですよ 言ってみれば
(星野)(笑い) ごめんなさい いま、ちょっとポン出しの音声が……今日はブタ野郎のコーナーがないんで、ポン出しの(安元洋貴さんの)「ビショビショじゃねえか!」がないんで すいません 鳴らしたかった……
(高橋)星野さん、さっきもおっしゃっていたアル・グリーンの『Let’s Stay Together(一緒にいよう)』 例えば、マーヴィン・ゲイだと同じ「Let’s」でも『Let’s Get It On』なんですよね 「乗っからせてください」っていう
(星野)うんうん なるほど
(高橋)それに対してアル・グリーンは『Let’s Stay Together』 ちょっとプラトニックな感じで
(星野)そうですね なんかちょっとアル・グリーンって人生も壮絶じゃないですか なんかでも、そのプラトニック感もその後の職業……いわゆる音楽じゃなくなった後は牧師になって そういうところも含めて、性格が出ている感じがありますよね
(高橋)じゃあ、聞いてみましょうか アル・グリーンで『Let’s Stay Together』です
アル・グリーン/『Let’s Stay Together
(星野)はい お送りしているのはアル・グリーンで『Let’s Stay Together』です
(高橋)この時間帯に聞くとまた、たまらないものがありますね
(星野)ねえ 最高です この感じ、最高 曲を聞きながら、ただただしゃべるっていう 良いわー(笑い)
(高橋)でもアメリカのソウル・ミュージックって地域ごとに結構特色があって アル・グリーンっていうのはアメリカの南部のソウル・ミュージックで 都市部の、例えば北部のデトロイトとかシカゴとかニューヨークとかに比べると、アメリカ南部のソウル・ミュージックっていうのは割とシンプルで朴訥で、ちょっと泥臭い、洗練されきっていないところがあるんです で、アル・グリーンのサウンドとかはまさにその極みみたいなところがあると思うんですけど だからこんなシンプルな、素朴な音を星野さんがシングルの表題曲として、ドラマの主題歌として、J-POPとして落とし込もうとしていた モチーフとしてあったっていうことがまず結構僕、衝撃だったんですけど 「これは!」っていう
(星野)うんうんうん アル・グリーンはしかも、僕はこの曲がいちばん好きなんですよ で、『Let’s Stay Together』は『YELLOW DANCER』ぐらいの頃にブームがまた来てよく聞いていたんですけど なんかその感じは『YELLOW DANCER』にはなんとなく入らなかったんですよ で、なんかいまになってもう1回来たみたいな感じもありつつ で、この曲ってすっごいドライなんですよ 響いてないんですね なのでその響いてなさも含め好きで 「ドッドドタッ、ドドッ、ドッドドタッ♪」っていうのが で、たぶんその「ドッドドタッ♪」の「ドッドド♪」はたぶんコンガの広い方を鳴らさないで、(机を叩いて)ってやっているだけだと思うんですけど
(高橋)うんうん
(星野)もしくはジャンベみたいなやつをこうやってたぶん、(机を叩いて)やっているか 楽器は定かではないんですけど なんかその感じも含め あと、これは実は意識していなかったんですけど、この曲ってことを意識していたわけじゃなくて、「シンバルを入れてない」っていう話はよくしていたんですよ 『Family Song』で ライドシンバルとクラッシュシンバルを入れていないんです で、この曲って改めて聞いたんですけど、ライドはイントロで「チーン、チンチンチーン♪」って入っているんですよ で、クラッシュシンバルは真ん中に1回だけ入るんです それ以外、全部入らなくて なんかその感じもすごく好きだし 響いていかない感じっていうの? なんか発散しない感じっていうか
(高橋)そうですね
(星野)全部こう、タイトル通りですけど 「ステイ」していくっていうか その感じが、「ずっとそばにいる」っていう感じが音的にもするし そういうものも含めて、僕はこの曲を再現しようとして『Family Song』を作ったわけじゃなくて、ソウル・ミュージックの中にあるシングルが鳴っていな良いメージっていうものをすくい出して入れたいなと思っていて その中に、漠然とアル・グリーンとか で、シンバルが入っている曲ももちろんいっぱいあるんですけど その中でも入っていない感じのをなんとなくイメージしながら曲を作ろうと思っていて
(高橋)うんうん
(星野)で、楽曲をレコーディングする前に、そのアレンジの作業をしている時に「ああやってください、こうやってください」っていう時には「アル・グリーン」って言わないんです そうすると、すぐにイメージができちゃうじゃないですか そうじゃなくて、ミュージシャンの中で日本人として出てきてほしいので なんて言うか、真似したくはないので ミュージシャンにはモチーフ先を言わないように
(高橋)ワードを出しちゃうと、そうですよね それっぽく叩いちゃいますもんね
(星野)そうなんです だから、「誰々のあの曲」とか言わないようにしているし、自分もあんまりそう思わないようにしているっていうか その中で、ドラムのカースケ(河村智康)さんが大サビのところで、僕は違うビートをお願いしていたんですけど、たまたまやったビートが、(机を叩いて)これだったんですよ で、それをやった後に、「これ、アル・グリーンみたいだね」ってカースケさんが言ったんですよ
(高橋)おおーっ!
(星野)「しめしめ!」みたいな 「キターッ!」みたいな
(高橋)(笑い) すごいっすね、それも あ、ミラクルだ
(星野)そういうのがあって 「それ、じゃあ採用で」みたいな、そういうのがあって だからそういうのはすごい楽しいんですよね で、その「とにかく響かせないように」っていうのも僕は迷っていて 響かせたくない ビンテージエフェクトで「ファーッ」みたいなのにしたくないっていうのはあったんだけど、でもそういうのをしないとこのソウルな感じって出せないんじゃないかな?っていう危惧があって でも、その中で渡辺省二郎さんっていうエンジニアの方が「これ、響かせたくないんだよね」って言ってくれて 「でも、そのチャレンジってすごい難しいと思うんだけど、やってみよう!」って言って で、『Family Song』のあの響きの感じができたという感じなんですよ
(高橋)みなさん、そのコンセプトを割とすぐに察知したというか?
(星野)そうですね 「ソウルの感じをエフェクトに頼らないでやりたいんだ」みたいな話はしていたので で、記号で真似したくないっていう話は……「ウッドブロックとか使って2-4でポーン、ポーンとかは入れたくないんだ」みたいな話はしていたので で、あとそういうのにもう慣れているメンバーなんで 『YELLOW DANCER』の時からずっとそれはやってたから 同じメンバーなので だからツーカーというか、すぐにわかってくれるっていう 本当に素晴らしいバンドメンバーと一緒にこれができてよかったですね
(高橋)たしかにでもこれ、J-POPとかを聞き慣れている人からしたら、そのパーカッション アル・グリーンの曲 ちょっとやっぱりくぐもっているというか、スプリングがゆるいというか なんかすっきりしない感じがするんじゃないかなっていう気はするんですけどね
(星野)でも、僕にとってはすっごいタイトに聞こえるんですね 「ドッドドタッ、ドド、ドッドドタッ♪」っていうのが そのタイトな感じっていうのをどうしても伝えたいっていうか ダラダラやっているわけじゃないんだっていう で、太鼓って普通に叩いたらあの音には絶対にならないんですよ で、すっごいミュートして、いろんなものを張って音を止めないとああいう音にはならないので、そう作っているんですよね
(高橋)うんうん
(星野)だからそれは意図的にやっているわけであって、そういう環境で適当になったわけではないということなんですよね それをこう、いまの環境で一から作りたいっていうのはすごくありました
(高橋)うん じゃあ、次の曲に行きますか
(星野)はい(笑い)
(高橋)この調子で話していたら、大変なことになりますよ
(星野)これは、どうしよう これは大変ですよ
(高橋)あ、ちょっと大変なことになっているんですか?
(星野)もうすでに大変なことに?(笑い) じゃあ、1回CMを挟みましょうか CM、どうぞ!
(高橋)(笑い)
(CM明け)
(星野)改めまして『星野源のオールナイトニッポン』です 今夜はゲストに来ていただいております 音楽ジャーナリストの高橋さんです
(高橋)こんばんは よろしくお願いします
(星野)今日は芳朗さんと一緒に星野のニューシングル『Family Song』について語るというスペシャルなんですが……もう1時台のCMは全部行ったんで、あとは心置きなくしゃべれるんですが、この感じで行くと「イントロクソやべえ」(のコーナー)をやろうと思っていたんですが、できなそうです
(高橋)吹っ飛びましたね
(星野)すいません 近々、来てください
(高橋)4曲選んだんで 渾身の
(星野)そうなんですよ なんで、来週とか(笑い)
(高橋)本当ですか? 本当ですか? 大丈夫ですか?
(星野)来月とか(笑い) 近々、ぜひ
(高橋)よろしくお願いします 全然来ますんで
(星野)ありがとうございます リアクションが来ております 大阪の19才女性の方 (メールを読む)「私は昔の音楽に興味はあるのですがどれから聞いたら良いのかわからなかったり、まだなかなか踏み出せない状況だったので、『Family Song』に関わる60年代、70年代などの曲を聞けてめちゃめちゃ楽しいです もっと教えてください、高橋さん!」ということです
(高橋)ありがとうございます
(星野)東京都の方 (メールを読む)「今日のラジオ、最高です 中学生の時のワクワクしながらラジオを聞いていた頃を思い出しました 好きなミュージシャンからどんどん新しい音楽がつながっていく感じ そして大好きなソウルの話 聞いているだけでも世界が広がっていきます 楽しいです」ということです ありがとうございます
(高橋)でも星野さんはインタビューとかで結構ヒントをいっぱい出してくださるから、ルーツを追いやすい人だとは思いますけどね
(星野)そうですね 今回は特に、言った方が楽しいだろうなとは あんまり解説って、どうしてもやっぱり手前味噌な感じがしちゃうので 自分で言うのはどうしても、恥ずかしいっていうか気がひけるというか うーん なんかな……っていうのはあるんですけど でもやっぱり、今回の特にこの曲とあとこのシングル全体は言った方がいろいろと良いだろうなっていうか いま、音楽を……「アップテンポの曲とバラードの間が本当はもっとあるんですよ」っていう話とかも含めて、そういう耳を拡張するっていうか
(高橋)うんうん
(星野)っていうのも、せっかくラジオをやっているから、曲をかけたりもできるしっていうのも含めて、話した方が良いだろうなと思って
(高橋)じゃあ、行っておきましょうか
(星野)『Family Song』でまだ2曲、あるんで
(高橋)さっきはアル・グリーンの『Let’s Stay Together』で『Family Song』のサウンド面にスポットを当てたんですけど、今度は歌詞というか、メッセージ面にフォーカスしてみたいと思います で、紹介したいのはアメリカのヒップホップアーティストでマックルモア&ライアン・ルイスっていう白人のヒップホップデュオですね その『Same Love』っていう2012年の作品です これはLGBT 同性愛だったり同性婚に理解を求めるメッセージソングで、タイトルの『Same Love』にもあるように、「どんな愛も等しく尊いものである」というメッセージを歌っているんです だから星野さんの『恋』だったり今回の『Family Song』とかにも通底するメッセージを持った曲と言えると思います じゃあ、聞いてください マックルモア&ライアン・ルイスで『Same Love』です
MACKLEMORE & RYAN LEWIS/SAME LOVE feat. MARY LAMBERT
(高橋)はい マックルモア&ライアン・ルイス『Same Love』を聞いていただいております
(星野)イントロから良いですね
(高橋)染みますね まあ、メッセージもそうだし、星野さんのアーティストとしてのスタンスみたいな話にもなるかもしれないですけど 『Family Song』を通じてちょっとした衝撃的な体験があって 『Family Song』のWEBに載っている解説にも書いたんですけども
(星野)星野の公式サイトに載っているやつですね
(高橋)僕の3才になる娘が『恋』をきっかけにして星野さんの大ファンになって で、『Family Song』のミュージックビデオがリリースされた時に、真っ先に見せたんですよ そしたらもうすごい気に入って、「星野さんのお母さんのやつ、見せて!」って来るわけですよ で、見せていたら、星野さんが女装して歌っている姿を見て、すごい不思議そうな顔をして 聞いてくるんですよ 「なんで星野さんはこういう女の人の格好をしているの?」って聞いてくるんですね で、これはなんて答えれば良いんだろう?って思ったんですよ
(星野)ああ、うんうん
(高橋)で、そこで僕が答えたのは、「男の子が女の子の格好をしても良いし、女の子が男の子の格好をしても良いんだよ」って そしたら、なんとなく納得して 「じゃあ、男の子がお化粧しても良いの?」みたいなことを言ったりしていたんですよ
(星野)うんうん 素敵なやり取りですね
(高橋)だから、まさか3才の子供とこんなやり取りを行うことは思ってもみなかったというか めちゃくちゃ衝撃だったんですよ だから、ちょっと親バカかもしれないですけど、彼女はこれでLGBTの理解のもしかしたら入り口に立ったのかな?って思って それがすごい僕の中でめっちゃ衝撃で
(星野)それは、すごいよかったです
(高橋)で、星野さんはいま、自分の歌がまあ、『恋』のヒットもあってどういうところまで届くか?っていうのもよくお分かりになっていると思うんですよ でも、前にインタビューした時にお話をされていたように、「大衆に向けてレベルを下げる必要はないんだ」っていう風に言っていましたよね
(星野)そうですね 『恋』の時に まあ、それまでもそうですけど、そういうことは一切していないのに、ものすごい広がり方をしたので なんていうか、「大衆に合わせる」みたいな言い方ってあるじゃないですか で、それっていっつも「レベルを下げる」っていう言い方として使われるんですけど、そんなに大衆ってバカじゃないっていうか センスっていうものをそれぞれに持っているはずだから で、それは自分が「面白え!」って思ったことを全力で作った『恋』がワーッと広まったので、それは必要ないんだなって改めて思ったという
(高橋)それが、3才の娘とのやり取りを通じてちょっと実感できたというか いや、3才の子にも表現がシャープだったら何かしらのフックを与えられるんだなっていうのをすごい思ったんですよ
(星野)それはよかったです だから僕、そうですね いまやっぱり、あれは楽しいミュージックビデオを作りたいっていうのがまずあって リズムが伝わるような、っていうのがあったんですけど あれが面白いものとして受け入れられているのもあるし、なんか楽しいし、多幸感があるっていうのが良いと思うんですけど、格好については早く疑問がなくなれば良いと思うんですよね あれが普通になれば良いのにとすごく思っていて 「当時、これは結構衝撃的だったんだよ」って言えるぐらいに早くなってほしいなと思う
(高橋)うん
(星野)で、この『Family Song』もそれを声を大きくして訴えたいっていうことじゃないんですよね 「そういう風に、世界を変えていこう」じゃなくて、「もう、そうなんだって」っていうことを で、それを前提に曲を作りたいなと思ったんですよこれがスタンダードで、いまの時代の家族の歌だし、それを、「変えよう」っていう風に訴えていくんじゃなくて、それはもうすでにいろんな家族の形があって 同性の両親と、そこに子供がいるっていうことも普通になってくるだろうし あと、家族がいない人に向けて 一人暮らししている人もそうだし でも、友達とか、あとペットとか動物とかもそうだし そういうのも含めて あと、これはラジオでも言いましたけど、血がつながっているからといって「家族」って思わなくても僕は良いと思っていて 本当に愛がある人を家族だと思えば良いと思うんですよね だからそれも含めて、いまの価値観を内包した曲を作りたいなと思って
(高橋)うん
(星野)そうじゃないと、その時だけの曲になっちゃうので ずーっとこの先、家族の歌にやっぱりしたいなと思うので だから、そういうのも届いたっていうか エッジをきかせているつもりは全然ないんですけど エッジはなるべく削ぎ落としているんですけど(笑い) でも、そういうのにも引っかかってくれる……エッジをきかせたつもりはないんだけど、引っかかってくれるっていうのはすごくうれしいし、よかったなと思いました 改めて
(高橋)あと、星野さんは「これからの歌」とも言っていたじゃないですか だから本当にこれからの歌なんだと思いましたね だから、彼女……3才の子とかが未来ではこれがスタンダードになるんだっていう意味で、本当にこれからの歌だとは思いましたね 教えることができたなっていう それは本当に……
(星野)その芳朗さんの答えがいちばん良いですよね 「男の子が女の子の格好をしても良いし、女の子が男の子の格好をしても良いんだよ」っていうのが 本当にそれだと思います
(高橋)それは本当に自分でも衝撃的であり、ちょっと感動的な体験だったので 本当にありがとうございますっていう
(星野)いや、こちらこそ 良いお話をありがとうございます
(高橋)「星野め!」とも思いましたけどね(笑い)
(星野)なんで!?(笑い) ライムスターのみなさんがこぞって言う名セリフ(笑い)
(高橋)「星野め!」(笑い) 「ウチの娘に!」って(笑い)
(星野)さっきもね、ちょっとCM中にお話していましたけども、『YELLOW DANCER』をリリースした頃に宇多丸さんに「星野め!」って言われたことが……「いま、ニューアルバムの構想があって 先にやりやがって!」みたいな で、「星野め!」って言っていた理由がこれからニューアルバムが出るということで、非常によくわかったっていう(笑い)
(高橋)ライムスターは本当にブラック・ミュージックをどう日本で音楽として落とし込んで行くか?っていうことに腐心してきたグループなんで 星野さんの高みがきっとわかるんですよね
(星野)みなさん、聞いてくださいね ライムスターのニューアルバム 素晴らしいので
(高橋)そんなところですけど、星野さんも1曲選んでいるんですよね?
(星野)そうなんです すいませんね これは……
(高橋)これはヤバいことになっていますね
(星野)ヤバいぜー(笑い) でも、楽しいな これ、楽しいですね
(高橋)めっちゃ楽しいです!
(星野)非常に楽しいです 音楽をかけながらね で、いまの『Same Love』っていう曲も和訳とかも絶対にネットに転がっていると思うので
(高橋)ググると一発で出てきます
(星野)あと、ロジックのいつまでたってもタイトルが覚えられない電話番号の曲(『1-800-273-8255』)
(高橋)はいはい あれ、覚えにくいですよね
(星野)(笑い) あのちょっと前の曲なんですけど
(高橋)ロジックっていうラッパーがいるんです
(星野)ロジックのミュージックビデオがこの間リリースされて あれはぜひ、見ていただきたいですね あれはいまの話の連なりにあるもので
(高橋)ロジックの『Everybody』というアルバムに
(星野)その中に入っている、数字が並んでいる曲があるんですけど それをYouTubeとかで見てみてください
(高橋)はい
(星野)で、ええと、僕が……さっきちょっと芳朗さんとやり取りしていて 「なんか、ないっすか?」みたいな(笑い)
(高橋)あの、星野さんが「今回、60年代末から70年代初頭のソウル・ミュージックにインスパイアされました」みたいなことをいろんなインタビューで話しているじゃないですか だからそのへんでなんか、星野さんに1曲選んでいただけたらファンの人も嬉しいだろうなって
(星野)でもこれは何年なのかわかんないんですよ いまからかける曲は
(高橋)あの、74、5年かな?
(星野)これ、僕がすごい好きなんですけど まあ、クラシック中のクラシックでジャクソン・シスターズという人たちがいて マイケル・ジャクソンとは全く関係のない(笑い)
(高橋)(笑い)
(星野)全く関係がないけど、ジャクソン5っぽいっていう
(高橋)めっちゃ(関係が)ありそうな名前ですけどね(笑い)
(星野)でも、楽曲が良いからっていうことで名盤とされている で、その中で『Miracles』という曲があって その曲なんですけど 僕、楽曲を作る時にいつも「気づいてほしい」っていうところがいっぱいあるんですけど ここを「これだよね」って言ってほしいところとかがやっぱり、あるわけですよ でも、ほとんどの人がそれを気づいてくれないんです いままで 本っ当に気づいてくれないんです
(高橋)手を胸に当てて(笑い)
(星野)そう 本当に気づいてくれなくて 例えば、映画でもオマージュってあるじゃないですか で、オマージュとかパロデ良いってみんな気づくじゃないですか 「あそこ、あれだよね!」って で、音楽もそれがあって絶対に良いと思っていて で、それっていろんな音楽につながる要素にもなると思うし、遊び心だし、リスペクトとしても最大の表現でもあるし だから、いつも入れるんだけど、全然反応してくれないの 誰も 誰もわかってくれないんです
(高橋)(笑い) すいません、本当に
(星野)あの、『Friend Ship』っていう曲の間奏のドラムソロが『慰安旅行』と一緒ですとか、そういうのも全然気づいてくれないんです!
(高橋)ああーっ 胸が痛い……
(星野)いや、良いんです、良いんです でも、その中でたまに気づいてくれたりするとうれしいんですけど、これは誰も言ってくれなくて寂しいなというところを1個だけ
(高橋)『慰安旅行』っていうのは僕、衝撃でした
(星野)『Family Song』で……あ、じゃあ1回、ジャクソン・シスターズを聞いてみますかね 『Miracles』です どうぞ
Jackson Sisters/Miracles
(星野)はい お送りしているのはもう名曲中の名曲 ジャクソン・シスターズで『Miracles』です これ、いま年代を聞いたらアルバムが76年でシングルが73年だっていうことで 僕はその年代を意識していなかったんです この曲に関しては で、なにを込めたか?っていうと、キメなんですけど 「ダカダカダッ、ダダッ、ダダッ、ダダダッ♪」っていうキメが『Family Song』でも全く同じなんです キメの数が で、これって『Miracles』しかないと思うんですよ たぶん、このキメの数は 「ダカダカダッ、ダダッ、ダダッ、ダダダッ♪」って いまも(BGMで)ありましたけど それが、サビに入る前に来るんで で、イントロにも来るんで でも、気づいてくれねえの
(高橋)(笑い)
(星野)で、これをね、自分で言うのって、ダサいの
(高橋)まあ、そうですよ 言いたくないですよ
(星野)だっせーの でも、芳朗さんに「なにかありますか?」って言われたから、じゃあこれをっていう感じで でも、これをきっかけにそういうのって、気づいてもらえたら良いなと それって別にパクリとかじゃなくて、オマージュだったり音楽の楽しみのひとつでもあると思うんです だからそういうのを「パクリ」とかって言う風潮が僕はあんまり好きじゃなくて 音楽をすごい狭めているし 映画の世界ではあんなに良きものとしてみんな扱っているオマージュの場面が……全く同じ構図で同じ人の出方でっていうところをやっても褒められるのに、音楽ではなぜそれができないのか?っていうのもあるし
(高橋)うんうん
(星野)でも、それもあって で、全く違うものになっているという自信もあるんですけど だから、気づかないのはしょうがないんですけど(笑い) でも、そういうのは個人的な楽しみでもあり、でも、俺だったら気づくっていうのはあって なんでそれを途中まで、もう1回『Family Song』を
(高橋)諸々を踏まえて
(星野)そうです 歌詞も含めて 『Let’s Stay Together』も含めて、聞いていただきましょう 星野で『Family Song』
(星野)お送りしているのは星野で『Family Song』です 芳朗さんが「悔しい!」って言っていましたけども(笑い)
(高橋)悔しい! ちきしょー!
(星野)「デケデケデッ、デデッ、デデッ♪」って ねえ 良いキメなんですよ メールが来ています 宮崎県女性の方『Same Love』、私自身がLGBTの当事者であることもあり、温かいメロデ良いだけからでも、とても響くものがありました 今度CDを買って歌詞を調べてリピートしまくろうと思います」 ありがとうございます
(高橋)本当に素敵な歌詞なんで、ぜひチェックしてみてください
(星野)ぜひぜひ これはもう、本当に聞いて損はないというか、買って損はないですね 続いて……(メールを読む)「お二人の音楽愛が爆発している感じがたまりません お二人に質問なんですが、昔の音楽について、どんな風に知っていったのですか?」ということですね
(高橋)僕、ソウル・ミュージックに関してはもともとロックが好きで まさにさっきの話じゃないですけど、ソウル・ミュージックのエロいところというか、ちょっと大人っぽい感じのところがダメだったんですよね
(星野)あ、へー!
(高橋)これがビートルズだったら『I Wanna Hold Your Hand』じゃないですか 「手を握りたい」っていう プラトニックな 童貞フレンドリーな感じじゃないですか
(星野)(笑い)
(高橋)でもマーヴィン・ゲイはいきなり『Let’s Get It On』って 「やらしてください!」みたいな感じじゃないですか それがちょっとやっぱり、なかなか受け入れられなかった 受け付けなかったんですけど……まあ、歳を重ねるにつれてその味がわかっていったというのもあるし あと、そのシンプルさがやっぱり、まだガキンチョだとそのシンプルなところの味わいみたいなものが理解できないとか 回数聞いていって、音の核にあるものが見えていったっていう感じですかね?
(星野)やっぱりアーティストを聞いてそこからつながるみたいなのもありました?
(高橋)そうですね 星野さんも『Family Song』のインタビューでインスパイア源として話していましたけど、ホール・アンド・オーツとか あと、スタイル・カウンシルとか そのロックのミュージシャンがソウルを表現しているような、ブルー・アイド・ソウルが好きだったので そういう影響源のものを掘り下げていって聞いたりっていう感じですかね
(星野)僕も細野(晴臣)さんがそういう方っていうか 本当にいろんな音楽をつなげる方 伝道師っていうか で、細野さん自身も「その大きな音楽っていう流れの中に自分の音楽が一滴あるだけで良いんだ」っていう言い方をされていますけども なんか、そういう感じで僕も広がっていきましたね 人ですね やっぱり、どうしても 調べていったというよりかは僕は、自然とその人を聞いていたら広がっていったみたいなところがありますね
(高橋)でも本当、ルーツを見せてくれるアーティストは楽しいです
(星野)そうですね じゃあ、この後も引き続き 次は『肌』をお送りしたいと思います
(CM明け)
(星野)『星野源のオールナイトニッポン』、改めまして今夜のゲストをご紹介しましょう 音楽ジャーナリストの高橋さんです
(高橋)こんばんは よろしくお願良いたします
(星野)『Family Song』の話をしていたら、『Family Song』だけで1時間いってしまいました しまった!
(高橋)まさかここまで……(笑い)
(星野)まさか、盛り上がるとはっていうね メールが来ています (メールを読む)「いまの(ジャクソン・シスターズの)キメのお話ですが、『Sun』の最初にも同じリズムが入りますよね そこも意識されて作られたのでしょうか?」という これが、違うよ!(笑い)
(高橋)(笑い)
(星野)『Sun』のキメは違うよ! これはね、『Sun』のキメは「ダガッ、ダガッ、ダガッ、ダガッ、ダッ♪」です(笑い)
(高橋)(笑い)
(星野)ジャクソン・シスターズは「ダカダカダッ、ダダッ、ダダッ、ダダダッ♪」です 全然違うんです
(高橋)怖い怖い怖い(笑い)
(星野)でも、『Sun』を作る時もちゃんと「ジャクソン・シスターズにならないように」って考えて作りました
(高橋)なるほど ちょっと頭はよぎったわけですね
(星野)そうそう 「したい」って思ったけど、「まんますぎる!」って思って(笑い) 「このテンポにあの同じキメを作ると、それはクリエイティブではない」と思ったので でも、『Family Song』に入れるのはクリエイティブな感じがするっていうか、ちゃんと自分のフィルターを通したことになる気がするっていう
(高橋)まあ、気づかないですもんね
(星野)本当に気づいてくれないんですよ(笑い) なので、『Sun』はまた全然違いますね
(高橋)『Sun』は違うということですね〜
ここまで、次曲『肌』の解説に続く
まとめ
僕も実際に放送を聴いてお二人がかなり深いところまで話されていたのでびっくりしました。一曲を深く掘り下げることで星野源さんの音楽観やこだわりなどふつうにCDを聴いただけではなかなかわからない部分まで知ることができたので、またFamily Songwo違った角度から聴くことができそうです。
またいずれカップリングの『肌』『プリン』『KIDS』の話(話が盛り上がりすぎてKIDSまでいけなかった笑)の書き起こしもしようと思いますのでお楽しみに!(文:TAKAHA)

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