こんにちは、音楽ライターのTAKAHAです。
7月9日に『関ジャム 完全燃SHOW』で放送された「勝手にミスチル論!モンスターバンドの功罪を語る!」の内容と感想のまとめです。
語り部:
いしわたり淳治(作詞家・歌詞プロデューサー)、杉山勝彦(音楽プロデューサー)、スキマスイッチ
杉山勝彦「Mr.Childrenは困った存在。意識しないでやっても「ミスチル意識してやったの?」と言われるくらい大きい」
いしわたり淳治「ミスチルを意識しないでバンドやるのは無理」
スキマスイッチ大橋「学生時代からずっと聴いていたがミスチル聴いているのが恥ずかしいすぎるくらいに影響力があった」
勝手にミスチル論 プロが見た功罪
いしわたり淳治
「ミスチルのイメージ=インフラ(日常に欠かせない物)。音楽を始めた20年前からモンスターバンドでミスチルが良い曲を出していない間、僕は音楽を作ったことがない。水道をひねったら安全な水が出てくるように、ミスチルが曲を出したら名曲が出てくる」
ルール無用!ミスチルの歌詞は力技
Mr.Children「名もなき詩」Mr.Children "HOME" TOUR 2007 ~in the field~
例えばAメロを繰り返すとき、同じメロディでも文字数がバラバラ。
例:名もなき詩
1番
のこさずにぜんぶたべてやる(13文字)
きみはだれ (5文字)
2番
こんなふちょうわなくらしのなかで(17文字)
ともになやんだり(8文字)
いしわたり「ふつう作詞は曲ありきでそれを壊しちゃいけないという暗黙のルールがあるのに、歌いまわしを工夫して文字数をねじ込んでいる。それによってミスチルらしい早口が実現している、不思議なのは難しい歌いまわしでも一度で口ずさめるキャッチーさ」
いしわたり「メロディーに対して歌詞をねじ込むことで言いたいことが勝っている印象になる。メロディーの奴隷になって間延びした言葉を入れるとメッセージが負けてしまう」
例:成り行き任せの恋に落ち〜
手垢のついたテーマで名曲を作れる
Mr.Children「常套句」Music Video(Short ver.)
例:常套句
いしわたり「一般的にミュージシャンは個性を出したいもの、でも、1番手に入れるのが難しい技術こそが「誰にでも分かる音楽を格好良く作ること」、この曲は「会いたい」というこの世に1番多いのではないかというぐらいありがちなテーマで奇抜な言葉を一切使わずに名曲を作り上げました。ミスチルは奇抜にもスタンダードにも名曲を作れる。彼らが日本を代表するポップミュージシャンであることの証明がこの曲から伝わるのではないでしょうか」
いしわたり「ふつう「会いたい」がテーマの歌は特別な歌にするスパイスが必要。しかし、ミスチルはそれすらしなくてもいいほど」
スキマスイッチ大橋「僕は少し皮肉にも聴こえる。「みんながこの言葉を使ってるよね、でも僕はあえてこうやって使うよ」ってそれを『常套句』ってタイトルを置くことで並んでる言葉は普通なのにそこで一新されてる感じがする」
歌い方に幅がありすぎる!!桜井和寿の歌声
スキマスイッチ大橋
「(桜井さんは)一曲のなかでもストーリーに合わせて歌い方を変えている。腹式呼吸で太い声を出すよりも曲によってはノドを閉めて切ない響き方に持っていく」
Mr.Children「HERO」[(an imitation)blood orange]Tour2013 Live
例:HERO
Aメロ→弱い主人公(喉を閉めた歌い方)
サビ→ヒーローになりたいが確信がモテず…(ファルセット(裏声)
大サビ→ヒーローである決意(裏声を使わず地声で力強く歌う)
大橋「あえて喉で歌うことによって喋りかけているような雰囲気を出したりファルセットを使わず地声で歌うことで主人公の意思を言葉だけじゃなくノドで表現している」
Mr.Children「タガタメ」from Stadium Tour 2015 未完
例:タガタメ
大橋「タガタメも歌い出しは小さな日常を切り取ったテーマからものすごく大きなテーマに広がっていく曲で、日常のワンシーンから心の叫びに後半で広がっていく。最後ではノドを潰すくらいの歌い方して「これが伝えたい!」ということを表現している」
Aメロ:優しい歌い方で表現
曲のラスト:平和への願い→喉が潰れるほどの叫び
タガタメの歌詞のテクニック
いしわたり淳治
「平和の歌は道徳的・凡庸になりがち。だからこそ自分の日常と世界平和がどうつながっているのかを表現しなければならない、ミスチルはそこが最短ルートで完璧にできている」
ディカプリオの〜(自分の部屋)
この星を見てるのは〜(空)
ある人は泣いてるだろう〜(他人)
子供らを被害者に(子供の未来)
音楽のセオリーを壊す不良!!
杉山勝彦
「Mr.Childrenといえば「JPOPの王道というイメージがあるが、実は音楽のセオリーを壊す不良なことをやっている。それが『終わりなき旅』の3A(3番Aメロ)に集約されている」
Mr.Children『終わりなき旅』25th Anniversary Edition
例:終わりなき旅
ギターリフ(繰り返すフレーズ)→曲の長さ:7分4秒→6分50秒も同じリフ
杉山「ポップスは印象的な繰り返しを一瞬休ませるシーンを作るなどしてメリハリをつけるもの。普通なら3番Aメロで崩してもいい。だが、この曲はそのまま同じリフを繰り返すことで「終わりなき旅→止まらない足音」を表現している」
杉山「桜井さんは実際に「曲に感動のサブリミナルを入れるのが技術」だと言っていて意図してるこういうことをしていると思う、また終わりなき旅は「9回」も転調が繰り返されていて転調は普通は多くても4回、1回も転調しないのがベーシック。だがあえて9回転調させることで「終わりなき旅→人生の紆余曲折」を表現しているのではないかと思う」
杉山「ミスチルが20年以上も第一線で居続けるのは「王道」である「Mr.」の部分とセオリーを壊す遊び心の「Children」の部分を併せ持ってるからなのではないか」
ミスチルっぽい歌のリズム→ミスチル割り
Mr.Children - innocent world - 2007 日産スタジアム LIVE
Mr.Children「Any」Music Video(Short ver.)
例:innocent world、Any
杉山「あまりに効果的に使われるのでミスチルより前に使われていた曲まで「ミスチルのマネ」と言われてしまう」
ミスチルのアレンジに欠かせない小林武史の存在
スキマスイッチ常田
「イントロがとにかく凄い。「合いの手(対旋律)=主旋律を効果的に補うもう1つのメロディー。曲をカラフルに彩る効果がある」を巧みに使っていることが多い」
例:口笛
常田「イントロが鍵盤同士の合いの手で、普通はギターやベースでやるところを躊躇なく鍵盤を使っている。良い音楽を届けるためにはバンドサウンド以外でも様々なアレンジを取り入れている。Mr.Childrenというプロジェクトの意味合いもあるんじゃないか」
Mr.Childrenの本当の凄さ
チャラン・ポ・ランタン小春
「桜井さんの凄さばかりクローズアップされがちだが、バンドとしてのバランスが凄く美しいバンドで桜井さんもあの3人(田原・中川・鈴木)がいなかったらこんな曲は書けないと思う」
その、収録終盤まで、桜井さんの凄さを知ることはできたのですが、ここ1年ちょいで私が感じたMr.Childrenは、4人のそれぞれのバランスと役割と、支え合ってる姿が本当に美しいバンドだと思っております。ライブ終わった後に、お互い褒めあってるところとか見ると泣けます #関ジャム
— 小春 (チャラン・ポ・ランタン) (@suttokodokkoiii) 2017年7月9日
もっと知って欲しいのは、フロントマンを支えている3人
— 小春 (チャラン・ポ・ランタン) (@suttokodokkoiii) 2017年7月9日
感想
Mr.Childrenが番組で特集されることは珍しいことではないのですが、ここまで音楽的に深く掘り下げてくれる番組ははじめてではないでしょうか。
個人的には番組ラストに小春さんがおっしゃった「この4人だからこそのMr.Children」というのが本当にそのとおりだと頷きました。桜井さん自身も以前、
「僕の曲を一番最初に聴くのはメンバー3人だから、知らず知らずのうちに3人が気に入るような曲を作っているのかもしれない。」
と言っていたのがすべてを物語っているのではないかと思います。こんな素晴らしい日本一のバンド・Mr.Childrenをこれからも応援します!(文:TAKAHA〉
- アーティスト: Mr.Children,桜井和寿,小林武史
- 出版社/メーカー: トイズファクトリー
- 発売日: 2001/07/11
- メディア: CD
- 購入: 14人 クリック: 132回
- この商品を含むブログ (206件) を見る
- アーティスト: Mr.Children,桜井和寿,小林武史
- 出版社/メーカー: トイズファクトリー
- 発売日: 2001/07/11
- メディア: CD
- 購入: 11人 クリック: 83回
- この商品を含むブログ (151件) を見る