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岡崎体育新曲『感情のピクセル』はロックバンドへの警鐘と皮肉。歌詞考察・感想など

こんにちは音楽ライターのTAKAHAです。

 

新進気鋭、奇想天外な楽曲とプロモーションで注目を浴びてるアーティスト・岡崎体育の新曲『感情のピクセル』のミュージックビデオが公開されている。

 

www.youtube.com

 

 

岡崎体育『感情のピクセル』 

楽曲のコンセプトは一見するとONE OK ROCKやUVERworldのようなロックバンドにありがちな激しい曲調と「重ねた手のひら 風の色はもう見えなくなる 怯えて震える 身体を焼き尽くしていく」という自分自身を自問自答するような内省的な歌詞が特徴のハードロックナンバーなのだが、サビで一転

どうぶつさんたち だいしゅうごうだわいわい

といきなりちょける(ふざける)といういわゆる「ネタ曲」だ。

 

これを受けて、各ネットメディアやTwitterなどのSNS上では「サビまでは格好良いのに…」「サビまでのギャップが…」といかにもサビまでは格好良い曲だという声が多く挙がっているがこれは完全なる間違い。

この楽曲の真意は「なにか言ってるようでなにも言ってない、薄くて浅いロックバンドの曲に対するアンチテーゼ」が込められているのだ。

 

感情のピクセル 歌詞

重ねた手のひら 風の色はもう見えなくなる

怯えて震える 身体を焼き尽くしていく

もう何もかも信じたくはない

I don't believe it anymore cause I feel sad

記憶を辿ったって何も変わらないよ

 

どうぶつさんたちだいしゅうごうだ わいわい

おいでよ ブタさん ウサギさん キツネさんにゾウさん

みんなでたのしく うんぱっぱのぶんぶん

おなかぽんぽんぽんのやっほー

チーターさんはかけっこじゃまけないぞ

過去を消し去るように疾走れ Don't give fxxk with me

 

狂いきったイメージと 絶望の隙間に消え落ちていく

零れ落ちた闇雲のアンサー まだ見つからないまま

風の色はもう見えないけど 前までは見えてた 怖っ

何て?

 

どうぶつさんたちだいしゅうごうだ わいわい

おいでよ ワニさんもなかまにいれてあげて

みんなでたのしく うんぱっぱのぶんぶん

おなかぽんぽんぽんのやっほー

ワニさんもなかまにいれてあげて

ワニさんもなかまにいれてあげて

 

分かち合えない生き物としてのカテゴライズの壁

乾いた果実も一度乾くともう戻れない

 

どうぶつさんたちだいしゅうごうだ わいわい

そろそろワニさんもなかまにいれてあげて

みんなでたのしく うんぱっぱのぶんぶん

おなかぽんぽんぽんのやっほー

さすがに気の毒になってくる

思いやりという名の道徳的価値の再認識

ワニさんもなかまにいれてあげて

(どうぶつさんたちだいしゅうごうだ わいわい)

(どうぶつさんたちだいしゅうごうだ わいわい)

 

 

歌詞を追っていっても、なんのことを歌ってるのか全くわからない。にもかかかわらずそれっぽく聴こえてしまうということは、いかに他のロックバンドの歌詞が雰囲気だけで作られているかという証明になっているのだから皮肉な話だ。

 

おそらく、先程挙げたONE OK ROCKやUVERworldの楽曲にこの感情のピクセルを紛れ込ませていたとしても(例えば、サビの「どうぶつさんたちだいしゅうごうだわいわい」のくだりはそれっぽい英語歌詞でごまかすなど)

※ Do bad sun touch die show go that why why?

誰も気づかないだろう。要はマキシマムザホルモンと同じ手法だ。

 

そもそも、このサビのくだりですらも今回の楽曲コンセプトからすれば本来は必要のないものなのだ。漫才をするときに全てのボケに対して、「これ全部ウソの話ですからね〜〜、フィクションなんでちょっと過激なこと言うかもしれませんけど、本気にしないでくださいね〜」というお笑い芸人はいないし、そんなことをされたら客は笑えないだろう。しかし、それをしなければ本気と捉えてしまう哀しい人間がいるのもまた事実なのだ。

もしも、サビの部分もそれっぽい歌詞で仕上げていたならば「え?岡崎体育どうしちゃったの?」「なにこの曲普通にかっこいいんだけど」と岡崎体育が意図するものとはまったくかけ離れた感想ばかりがネット上に溢れるだろう。ネタをネタとして、ギャグをギャグとして捉えられない悪い意味で純粋な人間がおそらく我々が思っている以上にいるのだ。

(そんな層にもわかりやすく「これはネタですよ〜〜、ギャグなんですよ〜〜」とわざわざレベルを下げてネタ要素を濃くし、シラケないギリギリのラインで成立させ、結果としてあれほどまでに完成度の高い楽曲に昇華させている岡崎体育の才能というヤツには舌を巻くばかりだが。)

 

それほどまでに多くのリスナーは思考停止で、歌詞の意味などまったく理解しないまま上澄みだけを掬って音楽を聴いているということなのだが、それは『ロック』という音楽の性質上仕方ないことだと思う。もちろん良いメロディ、良い音を楽しむのが『音楽』の醍醐味というやつだ。

 

それでも、この岡崎体育のある意味では全てのロックバンドへの「挑戦」、言葉を変えれば「冒涜」ともとれるこの行為に対して、全てのロッカーは今一度、自分たちの音楽性、「歌詞を書く」「音に乗せてメッセージを伝える」ということへの意味を考え直さなければいけないのかもしれない。

(文:TAKAHA)

 

 

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