『M-1グランプリ2015』はみなさんご覧になりましたか?優勝は『トレンディエンジェル』となりましたが、僕個人としてはこの優勝には苦言を呈さざるをえません。何故なら今回の大会は審査員の審査の仕方、そして敗者復活で勝ち上がってきた芸人が有利すぎるほど有利な状況と、お世辞にもフェアな大会とは言いがたいものがありました。やはり上記2点に加え、ネタを決める順番、後にネタを披露する芸人が有利になってしまう今の状況は変えなければいけません。
とはいえ、決勝進出した芸人8組プラス1組のネタはどれも素晴らしく、クジ順によっては誰が優勝してもおかしくはないほどハイレベルな戦いとなりました。今回はひとりのお笑いファンとしてネタを披露した芸人一組一組のネタの感想を書き綴りたいと思います。非常に冗長でつたない文章となりますがどうぞよろしくお願いします。
メイプル超合金
トップバッターを飾ったメイプル超合金、恐らく決勝に残った芸人たちの中で一番知名度がない芸人ではないでしょうか。にもかかわらずその異様な風貌と圧倒的な個性、ワードセンスは一度観た人たちの心をガッチリと掴んで行きました。今までのM-1をはじめ賞レースのなかでこれほどトップバッターが笑いをとるケースは初めてではないでしょうか。このメイプル超合金の発見こそが今大会最高の収穫ではないでしょう。ボケのカズレーザーのネタ中に「コンビニに行く」と言って舞台を捌ける、全く脈絡のないボケをする、などその破天荒ぶりは眼を見張るものがあり、それに対しツッコミの安藤なつのその風貌からは想像もできないほどウエットに富んだ的確なツッコミは大いに会場を沸かせました。もし最終決戦に進んでいたのなら準々決勝で披露した「秘孔を突く」ネタをしていたのではないでしょうか。
ネタ順がトップバッターということで結果は奮いませんでしたが、もしこれが後半や敗者復活で披露していたのなら優勝してもおかしくはないほどの出来だったと確信しました。カズレーザーが最後の「賛否両論」という一番のフレーズを噛んでしまったことは残念ですが、放送後に多くの人の感想を眺めていてもこのメイプル超合金が一番面白かったと語る人は多く、確実に爪痕を残したと言っていいでしょう。ネタ後のコメント「コブラに憧れてこの格好をしている」というのを聞く限りもカズレーザーの方はナチュラルに狂っている感じがたまらなくそういういわゆる「芸人以外の仕事はできない変人」っぷりがヒシヒシと伝わってきました。まだ結成して間もないということでこれから年を重ねる毎にどんどんおもしろくなることを想像するとこれからの若手お笑い界が楽しみでなりません。
馬鹿よ貴方は
馬鹿よ貴方はを知ったのは前年度のザマンザイでのことでした。そのときは会場の空気感や本人達の緊張もあったのか結果は奮わず、会場のウケもイマイチでしたが今回はひと味も二味も違いました。平井ファラオ光の見るからに異常性を醸し出す異物感はトップバッターのメイプル超合金のおかげもあり今回の大会の雰囲気にガチッとハマることができました。「顔をひし形にする」「脳みそを見せる」など彼にしか言えない異常なボケがかなりウケ、特に終盤の「大丈夫」の連呼は1分以上にも及び、個人的には今大会一番のボケだったのではないでしょうか。一瞬無言になる彼ら独特の「間」はスピード感がウリとしている最近の若手芸人の中で異質に近くメイプル超合金の時も思ったのですがあの落ち着きようは「レッドカーペット」などで畳み掛けるネタに慣れてしまった一般の客には本当に新鮮だったのではないでしょうか。
敗退してしまいましたが、敗退時に平井ファラオが放った「やっとM-1らしくなってきましたね」は敗者コメント史上一番のウケだったのではないでしょうか。もしも最終決戦に臨んでいたならファラオがどこか異国の国の言葉を話し続けるというネタを披露していたと思います。
なにが一番衝撃かと言うとネタを作ってるのがあのツッコミの方だということです。
スーパーマラドーナ
元々、人気も実力も兼ね備えた彼らでしたが今回のM-1も流石の出来でした。田中のサイコパスのような狂った発言に対し、武智の荒々しいツッコミがバッチリハマっていました。昔は田中のキャラ性が弱く、どうしても「強い武智が弱い田中をいびり倒している」というイメージが拭えなかったのですが、今回は田中の覚醒によってスーパーマラドーナ史上最高のネタ『落ち武者』が完成しました。敗退の原因としては前の2組の圧倒的なインパクトにより田中の異常性が薄れてしまった事、「香川照之」などのキーとなるボケがいまいち会場に受け入れられ無かったことが考えられます。しかし、先ほども言ったように彼らは元々実力者なのでこれからは仕事もどんどん増えていくと思うといちファンとして楽しみでなりません。
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和牛
あまり馴染みのないコンビだったのですが、「結婚式を抜け出した花嫁に対し、異常なまでの正論性で論破し続ける」というこれまたサイコなネタを披露し会場を沸かせました。しかし、ボケなのか単なる屁理屈なのかは受け取る側すなわち僕達によって委ねられ、屁理屈と受け取ってしまった人にとっては少し笑いにくいネタだったかもしれません。ですがまったく噛まないセリフ回しや、物おじしない舞台度胸などは眼を見張るものがあり、未だ未知数な部分が多いコンビなので2本目を観てみたかったと思う気持ちもあるので次回に期待したいコンビです。
ジャルジャル
そのシュールさ、掴みどころのない風貌、発言ゆえファンの多さと比例してアンチの多い二人ですが今回の漫才は彼らの実力を全国に知らしめるには十分の出来だったのではないでしょうか。彼らが批判の対象にされる原因は「レッドカーペット」「レッドシアター」などの若手芸人のネタ披露番組で目立ってしまったことと、その勢いのまま「めちゃめちゃイケてるッ!」のレギュラーへと駆け上がってしまったことが考えられます。
ネタ自体は関西の賞レースや今年の正月にも披露された『言い間違い』『変な言い方』のネタでダブルボケスタイルだったのですが、あまりネタを観ない方々には新しいジャルジャルを観せられたと思います。元々個人的にジャルジャルはDVDを購入するほど好きで彼ら二人には最初から確かな実力は持っていたコンビです。中でも「同い年家庭教師」「ストリップ」「あんまり良くない歌」「しりとり」「落語」など彼らにしか出来ないネタがたくさんあり、その魅力が早く一般にも浸透してほしいと常々思っていました。そして今大会、後藤も福徳も「なにを考えているかわからない」外見が今回のネタに見事にハマり、確かなセンスによるテンポの良さにより途切れること無く笑いの波が起こり堂々の予選1位通過となりました。
銀シャリ
この二人も確かな実力に裏打ちされた西の若手芸人でこれまでも何度となく賞レース常連組としてその名を轟かせていました。鰻のとぼけたボケに対して橋本の強烈なたとえツッコミが魅力でこのコンビは最終決戦最有力候補としていました。今回披露された『料理のさしすせそ』のネタはパンクブーブー佐藤も言っていましたが題材としてはベタで新しさという観点からはそこまで評価の高いものではなかったのですが元々地力が他のコンビと頭一つ抜けている二人『ベルリンの!?』や『株式会社野菜』など名フレーズがバンバン飛び出し文句なしの予選通過、改めてその実力の高さを知らしめました。ただ、ここまでコテコテの関西芸人の漫才は関東やその他の地域にはちょっと強すぎたのかそこまで得点は伸びませんでした。
ハライチ
個人的に今大会優勝最有力候補として挙げていたのがこの『ハライチ』で特に今回披露された「誘拐」のネタは3回戦、準々決勝の様子を観ても間違いなくどの芸人よりも笑いをさらっていました。これまでは『ノリボケ』と言われる独自のスタイルで岩井の無茶振りに澤部が右往左往するという鉄板スタイルがウリでしたが、今回はオーソドックスなスタイルで勝負。それが澤部だけでなく岩井のサイコ性、センスを際立たせとんでもない完成度を誇っていました。その出来だけを観れば優勝は間違いないとおもったのですが。しかし、なにが起こるかわからないのがM-1グランプリです、まさかの二人共ガチガチに緊張してしまい、ネタを噛むことを連発、イマイチ会場の空気を自分達のモノにできず決勝組中最下位となってしまいました。
いくらテレビで場数を踏んでいると言っても彼らもまだ若いのです。M-1の重圧に負けてしまったのかもしれません、しかし彼らの面白さは誰もが知っています。まだまだこれからです。ネタに関しても準々決勝までの最後のフレーズを「すぐやれる女」と際どいものに変更していたところに彼らの笑いに対するストイックさと覚悟を感じました。
タイムマシーン3号
『爆笑オンエアバトル』やM-1グランプリ常連の今大会一番のベテランコンビ、今年が最後とあって大会にかける意気込みは並々ならないものがありました。動けるデブ関の「全てを太らせる能力」のネタでジョイマンのような韻を踏みわかりやすさと発送の素晴らしさを兼ね備えた素晴らしいネタでした。後半はツッコミの山本が「全てを痩せさせる能力」と展開を見せ彼らのネタのなかでもぶっちぎりの完成度を見せ会場は大ウケでした。
僕が今大会で一番納得がいかないのが彼らが最終決戦に残らなかったことであり、それこそが今年のM-1グランプリ、そしてこれからのM-1グランプリにおいて絶対に改善しなければならない問題点の一つでした。
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敗者復活 トレンディエンジェル
結果として優勝したのがこのトレンディエンジェルでした。彼らの自分達の身体的特徴を武器にした老若男女誰にでもわかりやすいポップなネタが売りのコンビです。敗者復活組の中でも知名度が高く、正直個人的には同じく敗者復活のとろサーモンが勝ち上がってくると思っていたのですが視聴者投票により「知名度のある」トレンディエンジェルが決勝に残りました。いまの時代は彼らのようなキャッチーで誰も傷つけない自虐的なネタを一般の視聴者が欲しているのだと思うと少し寂しくもありますが、確かに会場の空気を一番モノにしていたのは紛れも無く彼らで今回の優勝は然るべきでした。
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しかし、先ほども述べたように未知なる若手であるメイプル超合金、馬鹿よ貴方はや、無名ながら実力者のスーパーマラドーナ、タイムマシーン3号を最終決戦に残さず知名度もあり優勝してもそこまで変化のないであろう彼らを残し、優勝させてしまったのはどうかと思いました。
本来、純粋なる「面白さ」だけで評価されるべきの大会で唯一「無名芸人が一夜にしてスターになれる」べき場所であるM-1グランプリに「知名度」「人柄」などが評価されてしまっては結局、無名な芸人たちが介入する余地はなく目新しさのないものになってしまいます。であれば、例えば準決勝でもとろサーモンや囲碁将棋、学天即、笑撃戦隊なども決勝に残したほうが全体的なお笑いのレベルアップになるのではないでしょうか。極論を言えば「今年◯本以上テレビ出演したコンビは出場できない」という規制を立てた方がよりフェアな大会になるのではないか、とさえ思ってしまいます。
今回トレンディエンジェルが「漫才師の日本一」になってしまったことで大会の意義が大きく変わってしまったのではないかと危惧しています。確かに彼らはあの日一番おもしろかったのですが個人的にはやっぱりこのM-1グランプリは「誰も知らない面白い芸人を見つける」大会であってほしいと強く思いました。
最後に敗者復活組で個人的に大好きな芸人達を紹介して終わりにしたいと思います。
囲碁将棋
同世代の男性を狙ったかのようなワードセンスと屁理屈を得意とする頭脳派のコンビ。ボケの文田の頭の良さと根建のリアクションはかなりの面白さで本当に同じくらいの年齢の人たちに知ってほしいです。準決勝では昨年のザマンザイでも披露した「チアリーディング部」のネタを披露しました。結果として大爆発とはいかなかったものの本人も言っていたように好きなネタを思い切りやるという宣言通り囲碁将棋らしいものを見せてもらいました。3回戦、準々決勝でも見せていた「副業」もかなり面白く必ず近年に決勝進出するであろう有力なコンビです。
とろサーモン
一貫して久保田の異常性を全面に打ち出したコンビです。今回披露された「石焼き芋」のネタはこれまでのとろサーモンのネタの中で間違いなく最高傑作だったのではないでしょうか。敗者復活の会場でもこのとろサーモンが一番ウケていましたし、ネタ終わりの「続行!」「継続!」は会場が笑い声で地響きが起きるのを画面越しでもはっきりと確認することができました。それゆえにトレンディエンジェルが決勝に勝ち上がったのが残念でならないのですが、このクオリティならば間違いなく来年は決勝に残ることでしょう。
笑撃戦隊
あまり馴染みの無かったコンビなのですが本当に面白かったです。「ツッコミを先に言ってからそれにボケを加える」という漫才の常識をくつがえすような発明漫才を披露し、会場を大きく沸かせました。これから技術がもっと付けば間違いなくネクストブレイク芸人として名を連ねることになるでしょう。
さらば青春の光
キングオブコントなどで馴染みのある方も多いのではないでしょうか。人を喰ったようなメタネタを得意とするコンビで今回のM-1でもその強烈なセンスをいかんなく発揮していました。なかでも敗者復活で見せた次々と役をチェンジする漫才?は間違いなく彼らにしかできないでしょう。あの漫才を決勝で見せたとき審査員たちがどういう反応をするのか楽しみだっただけに勝ち上がれなかったことが残念です。
学天即
サイコナルシスト四条と理論派ツッコミ奥田の実力派関西芸人。個人的には決勝は間違いなしと思っていたのですが、M-1の空気が彼らに合わなかったのか期待する結果は得られませんでした。あのコンビは四条のキャラがハマるかどうかが大きな分かれ道になっているので一度ハマればぶっちぎりで優勝できるくらいのポテンシャルがあるので次回に期待です。
かまいたち
こちらも関西が誇る実力者で、どうみても怪しい風貌の山内と強いツッコミが持ち味の濱家のコンビで今回は山内がひたすら人の悪口を言うという好き嫌いがはっきり分かれるネタで勝負していました。個人的には本当に大好きなネタで特にフラッシュモブのくだりは息ができなくなるほど笑ったのですが引いてしまった人も多く結果は残念なものになりました。ですが、彼らにはブレずに客に媚びない漫才をし続けて欲しいと思います。
ナイツ
別の意味で今回気になったのがこのナイツです。彼らは皆さんも御存知の通り人気も実力ももはや申し分の無いレベルまで来ているのですが今回彼らが披露したネタは明らかに決勝に上がるつもりもないようなネタでした。その内容は吉幾三さんの「おら東京さ行くだ」を土屋がひたすら歌い続け、それに対し塙が下手なツッコミを続けるというもので彼らのことだからなにか大きなフリになっているのかとおもいきやそのまま終わってしまうという異常事態でした。その尖った姿勢は決して嫌いではありません。次は本当に面白い漫才を期待しています。
朗報
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