(モーツァルトは35で死んだ。同じ年になったというのに私は何も成し遂げていない。10年前に結婚したけど子供はまだいない。いや、作らなかった。 プロのピアニストとして認められるまで夫にわがままを言って。なのに、今は時間だけが指の間から零れ落ちていくようだ。ハッキリしているのは今の自分は若い頃の自分が思い描いていたものとはかけ離れているということ。)
主人公の梅田美奈(尾野真千子)の父親は有名な音楽家だった、その影響か美奈は自宅でピアノ教室をしながらプロのピアニストを目指していた。
美奈の家にピアノを習おうとある母親が娘を連れてやってきた。
ピアノを教えようとする美奈だったが、娘に「ピアノは好き?」と聞くがその子は首を横に振る。
「じゃあ、辞めよっか。ピアノは嫌々やっていても上手くはなりません。」
すると娘の母親は「ピアノを好きにさせるのもあんたの仕事でしょ!」と怒りを露わにし出て行ってしまう。
すると美奈はトイレに行って便器に顔を突っ込んで大声で叫びだす。
夜、旦那の梅田信次(江口洋介)が帰宅する。
信次は不動産屋の営業をしているお人好しな夫だった。
「やっぱ、美奈ちゃんのカレーは最高だな!俺への愛がいっぱい詰まってるんだよ!」 「…そういうこと言える信ちゃんが羨ましい。」
すると信次は、近所でゴミ箱を漁るなどする不審な生き物が出没しているという噂を口にする。
すると、庭から「ガサっ」という音が。
美奈は驚いて庭へと足を運ぶが、人の気配はない。
そこに信次の妹の不破春代(坂井真紀)から電話が。
施設にいる信次の母親の見舞いに行って欲しいという。
翌日、家でピアノを弾いている美奈。今度のコンクールが駄目ならもうピアニストになる夢は諦めようと思う。そんな中庭から物音が。美奈が怖がりながらも庭の茂みをかき分けると服も体も汚れた男の子が。
「…はじめまして、お名前は?お母さんは?お父さんは?もしかして、お腹空いている?」
と子供にドーナツを渡す美奈、夢中でそれを頬張る子供。
美奈は子供を病院に。子供は栄養失調だという。
子供はネグレクト(育児放棄)を受けていたという。
児童相談所の堂本真知(余 貴美子)が、異臭がしているアパートがあってそこに住んでいる子であるという。
「これから、あの子はどうなるんだろうな?」
帰り道、信次はあの子のことが忘れられず、子供が住んでいたと思われるアパートを訪ね、中に入る。
中には目も覆うような散らかった部屋だった。
そこに男の子が繋がれていたと思われる鎖があった。
「ねえ、何考えてるの?」
「いや、俺に何かできることないかなと思って。」 「変なこと考えないでよ。今までもそうやって苦労してきたんだから!」
次の日、美奈がピアノの演奏会から帰ると信次が家にいて料理を作っていた。
美奈は演奏会では自分が父親のコネで出られているという目で見られていたという。
落ち込む美奈はピアノを弾く。
すると庭先から物音が。 カーテンを開けると施設に入ったはずの子供が。
しかし子供は衰弱しており、養護施設に連絡をして施設で看病を受けることに。
信次は堂本に子供のことを聞き出そうとしますが個人情報だから教えられないと突っぱねる。
「少しくらい教えてくれてもいいんじゃないですか。訳わからないんですようちに二回もやってきて、誘拐したのではないかと疑われたのよ!」
美奈がそう言うと 堂本はしぶしぶ
「アパートを契約していたのはあの子の母親だけど契約書の情報はデタラメでした。男が何人も出入りしていたみたいだから、誰の父親なのかを特定するのは難しいと思います。」
と子供の身元も名前もわからないことを明かす。
その夜、信次が美奈が話す。
「なんでうちに来たんだろう?」
「もしかして、私たちに会いたいから…なんて言わないよね。」
「これ見て、録画していたテレビを止めたら55:11(ココがいい)だよ!ほれ、ココがいい!」
「勘弁してよね、これ以上の深入りするのは。」
後日、信次の妹の不破春代と娘が家に。
「本当に養子をもらう気なの?」
「え?話が見えないんですけど。」
「いや、だからお兄ちゃんが言ってたんだけど養子をもらうかもしれないって」
「ただいま〜!近くに来たから帰ってきた!」
すると、信次が汗だくで家に帰ってくる。
「信ちゃん、一体どういうつもり?春代さんが変なこと言ってた」
信次は男の子を特別養子縁組に申請したい、この間の男の子もそうした方がいいんじゃないか、運命を感じるんだよ!と熱く語る。
「あんなに可哀想な子が二回もうちにやってきて知らんぷりをするのは人間としてどうかなーって。」
反対する美奈に信次は
「じゃあ、もう一回この家に来たら考えてみてもいいんじゃないかな。また、来るような気がするんだよな。」と言う。
すると庭から再び物音が。
「来た!!」
「..嘘。」
しかし、そこにいたのは信次の弟の梅田巧(速水もこみち)だった。
結婚を迫られた女性に追われていたという。
「なんだかんだで子供が欲しいんでしょ?お義姉さんもまだ35歳なんだから子供作ればいいじゃない。これで解決じゃない」と春代。
その夜、美奈が
「本当に子供が欲しいの?だったら今から作ろうよ。」
と言うが、信次はもう一度、あの子のいる施設に行かせてくれないか、これで駄目だったら諦めると美奈に頼む。
施設を訪ねる信次と美奈ですが、男の子の姿はない。
すると堂本やってきて男の子の姿が消えたと言い出す。
「もしかすると家に行っているかもしれない」と、信次たちは家に戻るが子供の姿はない。
美奈は「いいよ、探したいなら行ってきて。私はピアノの練習をするから。」と信次を送り出す。美奈はそんな信次を好きになったのだと思い出す。
美奈は家でピアノの練習を始める。
すると庭から再び物音が。
そこには案の定子供がいた。
「どうして、こんなところにいるの?辛い事があったのは分かるけどさ、言いたい事をちゃんと言わないと伝わらないんだよ?」
無言の子供。
「勝手にしたら。施設の人に迎えに来てもらうから。」
すると、突然走りだす子供。
道路に飛び出してしまいあわやダンプカーと衝突してしまう一歩手前の子供。
すると信次が現れて男の子を自宅に連れて帰ります。
自宅に戻る二人。すると堂本が男の子を引き取りに現れ
「さ、帰りましょう。ここにはもう来ちゃいけないですよ。お二人にご迷惑ですから。」
と男の子の手を取る。
「あの、すみません。最後にもう一回だけ質問していいですか。教えてくれないか、なんでこの家に三回も来たんだ?この家が好きだったのか?美奈か俺が好きだったのか?頼むから教えてくれ!じゃないと二度と会えなくなるかもしれないんだぞ!頼む、教えてくれ!!」
と子供に話しかける信次。
すると、男の子はピアノの方に目を向ける。
「ピアノか?ピアノが好きなのか?」
「美奈ちゃん、ピアノを弾いてくれないか。この子が来たのは美奈ちゃんがピアノを弾いている時なんだよ!俺と一緒なんだよ、美奈ちゃんんピアノが大好きなんだよ!」
美奈がピアノを弾き始めると、男の子はどんどんピアノに近づいていく。
そして美奈の隣に座り一緒にピアノの鍵盤を押し始める。
ドーはドーナツのド、レーはレモンのレ…。
「あの子は美奈ちゃんが必要なんだよ。ピアノの音を聞くと嫌なことを忘れることができるんだよ!」
「堂本さん、あの子と特別養子縁組にしてくれませんか?」
しかし、堂本は養子縁組の現実の厳しさを告げる。
海苔しか食べない子供。
飲み物や食べ物を撒き散らす子供。
噛み付いたり、赤ちゃん帰りをする子供。
里親になると地獄のような毎日が待っている、そして、一番負担になるのは母親になる美奈だと。
二人はまだ若いのだから子供を作ればいいじゃないかと告げる堂本。
すると何かを覚悟したような表情の美奈。
「私は、母親になる自信はありません。」
「…でも、この子は監禁されていたアパートから抜け出してどこに行ったらいいかわからずウチにやってきたんです。運命って命を運ぶって書きます。この子が私のピアノを聴いて小さな命を運んできたのなら、ここの子にするのが私たちの運命なのかもしれません。」
「今、ここで愛していますと言えるのは信ちゃんです。私は信ちゃんの妻です。私たちに特別養子縁組の申請をさせてください。」
「後戻りはできませんよ」と堂本が告げるが、
「構いません。今の自分に戻りたいとも思いません。」
と美奈。
(私たち、夫婦は二つの運命に向かって歩き出した。一つは予想を超えた地獄の日々に….。もう一つはこの子が引き起こす、信じられないような奇跡に。)
感想
捨て子を拾うというテーマのドラマで言えば好きだったのは「人にやさしく」。人にやさしくのようにコミカルな部分は少ないような気もするが、江口洋介の軽快な演技は「ひとつ屋根の下」を髣髴とさせて懐かしい気持ちになるのでこれからも観続けたい。